周囲の声をよそに、ジュエリー関係の会社に就職しました。

いまからもう20年以上前のお話です。

 

大学を卒業後、教員になることを進める周囲の声をよそに、ジュエリー関係の会社に就職しました。友人たちにはその意外な方向性にびっくりされ、家族も驚いたことだろうと想像しますが、どうせならきれいなものに囲まれて働きたいという、漠然とした動機によるものでした。

 

新人時代を過ごした店舗での出来事です。

 

その店は、当時40代のスタッフが中心で、20代は私だけ。当時の店長は、ワーキングママのはしりのような人で、社内でも有名な厳しい方でした。それだけにその店に配属された新人は、その後どこへ行っても仕事のできる人間になっているという評判でした。

 

お客様ともスタッフとも親子のように年齢の離れた環境で、私は自分の役割を勝手に雑用裏方と決めてしまっていたようです。電球替えやポスター貼り、力仕事は若手の仕事という思い込みが、私にも他のスタッフにもあったのでしょう。当然接客技術は向上せず、なかなかお店の売り上げに貢献できませんでした。

 

ある日、前月の目標値未達成の報告書を提出することになり、そのいいわけに、雑用に時間がかかり接客できる時間がなかったと書いてしまいました。自分としては、作業をもっと手際よくできるようになりたい気持ちからの反省でしたが、それを読んだ店長からカミナリを落とされることに。

 

「こんなことを言い訳にして、あなたはそれでプロなのか」

 

新人ではありましたが、プロという問いかけに、心が揺れました。

 

「あなたの仕事の本文は、お客様のおもてなしであって雑用ではないでしょ。たぶんあなたは目の前にお客様がいても、声をかけなかったのね。それはお店をのぞいてくれたお客様に対して、一番失礼なこと。買う買わないではなく、ここへ足を向けてくれた方へ、最大限のおもてなしをするのが本当だよ」

 

他のスタッフもいる中で、社会人としてはじめてはっきり説教されたこのとき、自分がプロとして現場に立っているべき立場なんだとわかりました。口調もきつく、端から見れば叱られている雰囲気だったと思いますが、私は逆に励ましをいただいたと感じたのです。

 

その後で他のスタッフに「事務仕事、全員でやらなきゃだめじゃないか」とも説教があり、そのことも私にとってはうれしい一言でした。

 

その後本社に転勤になり、現場を離れたとき、このときの経験が忘れられないものになっていました。バイヤーとして全く畑の違う仕事をすることになりましたが、常に自分がプロとして恥ずかしくない仕事をしよう意識することができました。

 

大分昔のことですが、今でも私の考え方の背骨になっているような経験です。